病気や怪我によって従業員が休職すると、抜けた穴を何とかして埋める必要があります。エースやベテランが抜けた場合は、労働力の低下の度合いも大きいでしょう。他の従業員に残業をお願いしたり、代替要員としてアルバイトを雇用したりと、経営者に求められる判断も少なくありません。

しかし戦力のカバーに気を向けるあまり、経営者が忘れてしまいがちなことがあります。それは「休職者の復職のサポート」です。復職までに時間がかかってブランクが大きくなったり、以前のような仕事ができなくなったりすることは珍しくありません。今回は、休職者にスムーズに復職してもらうための方法を考えてみましょう。

復職に向けたサポート方法

はじめに、従業員の復職をサポートする際の基本的な考え方を知っておきましょう。厚生労働省・中央労働災害防止協会がまとめた「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、休職者の復職を以下の5つのステップで行うよう指導しています。

第1ステップ:病気休業開始および休業中のケア
第2ステップ:主治医による復職可能の診断
第3ステップ:復職の可否の判断および復職支援プランの作成
第4ステップ:最終的な復職の決定
第5ステップ:復職後のフォローアップ

このガイドラインはうつ病などのメンタルヘルス不調を想定して作られたものです。しかしうつ病だけでなく他の疾病にも適用できると考えて構いません。ここまで細かくガイドラインが作られているのは、休職からの復職がそれだけ難しいことを表しています。事実として、労働政策研究・研修機構の調査では、病気休職制度を利用した人のうち、37.8%が復職せずに退職しているのです。

たとえ復職したとしても以前のように働くことができなければ、再び休職してしまう可能性も否定できません。そもそも自分の会社で何人の従業員が休職しているのか把握していない経営者・責任者もいると思われます。従業員を確実に復職させるには、不十分な休職システムを改善し、健康管理を徹底する必要があるでしょう。
参考: 厚生労働省・中央労働災害防止協会「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」

復職に向けたサポートは、休職開始の時点から始まっている。

休職からの復職をしやすくするには、休職開始の時点からのサポートが求められます。第1ステップにおいて重要なのは、休職予定の従業員に対し、休職の意味を十分説明することです。休職は、ただ「体調が悪いから休む」のではなく、元通り働けるよう心身を回復させるために行います。つまり復職が前提となっていることを、従業員に理解してもらう必要があるのです。

また「休職するとブランクを理由に復職を認めてくれないのではないか」と心配する従業員も多いでしょう。このような不安を払拭するために、復職の基準も説明しておかなければなりません。

「1日働けるだけの体力が戻っていること」「従業員に働く意欲があること」「職場の環境に適応できること」

このように、できるだけ具体的な復職のルールを決めておいてください。

さらに休職中のケアも重要です。治療に専念してもらうために、あえて休職者と連絡を取らないようにする企業もあるかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。休職者を「放置」すると、会社や仲間とのつながりが薄くなり、かえって復職しにくくなる可能性があります。加えて、本人の様子を確認できなければ、症状が回復に向かっているのかどうかもわかりません。

そこで休職者に負担がかからない範囲で、コミュニケーションを取りましょう。このとき意識すべきポイントは2点です。

  1. あらかじめ連絡する日程を決めておく
  2. 本人が負担に感じない連絡手段(SNSやチャットなど)を使う

コミュニケーションのなかで復職のためのプランは用意していることを伝えれば、本人も希望を持って治療に臨んでくれるでしょう。

復職の可否は、医師の診断と本人の意見から総合的に判断

休職者が復職を目指す上で難関となりやすいのが、復職の可否およびタイミングの決定です。どうすれば最適なタイミングを判断できるのでしょうか。

そもそも復職は、休職者の一存でできるわけではありません。本人から復職の意思表示に加えて主治医からの復職可能の診断書がそろって、ようやく復職できるのです。しかし主治医は、診断書に患者の意向を反映させやすいことから、実際は回復が不十分である可能性もあります。

そのため、主治医の意見だけを重んじるのではなく、産業医や会社指定医にも意見書の提出を求めるのがいいでしょう。もちろん、従業員本人やその家族の意見も重要です。復職面談を行って、本人の回復度合いや意欲なども確認しつつ、復職可能かどうかを総合的に判断してください。

さらに、スムーズな復職をサポートするための「復職プラン」の作成も大切です。当面は様子を見つつ職場に馴染んでいくことになりますから、フォロー体制は万全に整えておく必要があります。場合によっては、以前とは違う部署への配属や、短時間勤務も検討した方がいいでしょう。復職の最終決定は、準備がすべて整った段階で行うのがオススメです。

復職後のサポート体制を整え、サポートを徹底しよう

休職者の復職プランにおいて、ある意味1番重要になるのが、復職したあとのサポートです。せっかく復職しても、この段階でつまずいてしまい、従業員が再び休職してしまうケースは珍しくありません。離職してしまう可能性も高くなっていますし、休職と復職を何度も繰り返す場合もあるでしょう。

最も避けるべきことは、復職直後の様子だけで「これなら大丈夫」と判断し、そのまま「放置」することです。表面上はうまく溶け込んでいるように見えても、実はまだ心身の負担が大きいかもしれません。逆に、「新しく配属された部署に馴染めない」「気を使われすぎて仕事がやりにくい」というように配慮が裏目に出てしまうケースも考えられます。

そのため復職プランの実施状況は常に確認し、必要に応じて見直しを行いましょう。本人だけでなく、同僚や上長の意見も参考にして、プランを客観的に評価してください。もちろん、休職の原因となった疾病が再発しそうなら、早期に気づいてあげる必要があります。

ただし復職プランを優先するあまり、他の従業員に過度の負担がかからないよう注意しなければなりません。周囲が無理をしていることが本人に伝わると、再び休職する可能性が高まります。復職プランは、復職者本人だけでなく、受け入れる側にとっても実りあるものにするべきです。関係者全員が協力して、プランを成功に導きましょう。

まとめ

健康経営が意識される現代でも意図せずして休職することもあるかと思います。休職した従業員のうち、3人に1人はそのまま離職してしまいます。「重い病気なのだから仕方がない」と考えてもいいのですが、復職が叶わなかったのはサポート体制に問題があったからかもしれません。「正しく対応すれば、復職できたのではないか」。そのような疑念を抱えつつ、会社を去る従業員を見送るのはつらいものです。

そこで、まずは自社に休職中の従業員がいるのか調べてみましょう。休職と復職のシステム、そしてそもそも休職しないための健康管理体制も、改めて確認して見る必要があります。5つのステップに則って休職者を支援すれば、復職の可能性は高まるはずです。大切な従業員に戻ってきてもらうためにも、復職しやすい環境を整えていきましょう。