日本が直面している超高齢化と人口減少は、従業員の高齢化による健康問題を企業にもたらします。

今回は、テーマ「従業員の高齢化によって顕在化する健康問題」における問題点の確認として、健康問題が企業にどのような影響を与え、そして企業が健康経営などどういった対策を取るべきなのかをご紹介します。

従業員の高齢化による健康問題

まずは、従業員の高齢化によってどのような健康問題が起こるのかをご紹介します。

病気による損失【プレゼンティズム、アブセンティズム】

上表は年齢ごとの受療率(疾病治療のために、医療施設に入院あるいは通院した患者数と人口10万人との比率)を表していますが、入院・外来ともに45歳以上で率が増加していることがわかります。つまり高齢化が進めば、病気にかかる従業員が増加するのです。

そして「従業員の健康問題に関する経済的価値を評価する指標」にプレゼンティズムとアブセンティズムがあります。

プレゼンティズム(presenteeism)

「出勤はしているが、健康上の問題で個人のパフォーマンスが上がらない状態」を、プレゼンティズムといいます。
下図の通り、健康関連のコストの中で、医療費をはるかに超え最も大きい値がプレゼンティズムです。

プレゼンティズムは、以下のようなツールで測定できます。

WHO-HPQ(WHO)
WFun(産業医科大学)
・東大1項目版:病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事を評価してください。(1%から100%)

アブセンティズム(absenteeism)

「病気やケガを原因とした欠勤や遅刻・早退などで仕事ができない状態」が、アブセンティズムです。
前項の円グラフを見ると、プレゼンティズムや医療費より割合は小さいものの、健康関連コストの4.4%を占めており、やはり解決すべき問題です。

機能低下による損失【労働生産性の低下、労働災害の増加】

出典:JISHA 中災防

上表の通り、加齢にともない身体・精神の様々な機能が低下し、特に視力や聴力などの感覚機能やバランス能力は、大幅な低下がみられます。

そして身体・精神機能が低下すると、次のようなことが起きやすくなります。

  • 長時間の立ち仕事が困難になる
  • 転倒しやすくなる
  • 書類やパソコンの文字が見えにくくなる
  • 新しいことを覚えにくくなる

高齢の従業員には「経験や知識」があるものの、多くのデータ(*1)では機能の低下によって労働生産性が低下すると言われています。

また同じ理由で、高齢者の労働災害の発生件数が増加します。
下表を見ていただくとわかるとおり、40代までは就業者数と災害件数は同様の曲線を描いていますが、50代になると災害件数は突出して増加しました。
さらに厚生労働省でも、高年齢労働者の労働災害が高い割合で発生しているとして、様々な対策の調査研究(*2)を行っています。
参考*1:高齢化と労働生産性の関係についての一試論 ~都道府県別の労働生産性と高齢化率から~
参考*2:厚生労働省「高年齢労働者の安全衛生対策について」

企業への影響をこちらでもくわしく:超高齢化・人口減少が止まらない!企業への影響と対策とは?

従業員の高齢化による健康問題が企業に与える影響

従業員が高齢化し、病気や身体機能の低下といった健康問題が発生すると、企業にはどういった影響があるのか。
考えられる4つの影響をご紹介します。

影響1 従業員の生産性低下

2018年6月に横浜市(*3)が行った報告によれば、健康リスクの高い(健康状態の悪い)従業員ほど労働生産性損失は大きくなります。

また病気や怪我によって従業員が欠勤すれば、他の従業員の仕事量が増えるため、より生産性は低下します。
一人あたりの仕事量が増え、周囲とのコミュニケーションが取りづらくなれば、従業員のモチベーション低下にも繋がるといえます。
参考*3:労働生産性損失は年間76.6万円(従業員一人当たり)!健康リスクと労働生産性損失の関係が明らかに! 県内初!~中小規模事業所を対象に健康経営の効果を測定(第1回調査結果)~ 横浜市

影響2 組織におけるコストの増加

健康問題が悪化すれば、プレゼンティズム・医療費・アブセンティズムのすべてが増えることになります。
つまり単純に、健康関連の総コストが増加します。
また、上記の横浜市の報告(*3)によると、体調不良に伴う従業員一人あたりの労働生産性損失は年間76.6万円と推計。
例えば、従業員が200人の中小企業で半数が体調不要だとすれば、年間7,660万円の損失が出ていることになります。

さらに、医療費が上がれば健康保険組合の財政悪化を招き、健康保険料が引き上げられるため、企業負担の増加につながります。

影響3 各種リスクの増加

2008年3月に施行された労働契約法では、企業に「安全配慮義務」を負うことを規定しています。
労働災害が多発するということは、企業が従業員の安全に配慮していない、つまり「安全配慮義務違反」となり多額の損害賠償が命じられる可能性も。

また職場の風通しが悪い、良好なコミュニケーションがとれない結果として、不祥事の増加も考えられます。

影響4 組織の業績・イメージの低下

上記の影響1~3の結果、組織の業績やイメージの低下という大問題に発展することが懸念されます。

その結果、社員が退社する→求人が集まらない→さらに生産性が下る→より業績が下がりまた社員が退社する、という負のスパイラルに陥ってしまいます。
このような事態を避けるためにも、従業員の健康問題に対して、何らかの対策を取ることが必要です。

健康問題について企業が取るべき対策とは

健康問題における企業の最大の課題は、「従業員の健康維持」です。
そのために取るべき対策をご紹介します。

対策1 安全・健康確保に積極的に取り組む【安全衛生優良企業制度】

労働者の安全や健康確保に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を確保することが重要です。
企業がこうした対策を取ることは、労働契約法上の「安全配慮義務」遵守にも繋がります。

このような安全・健康確保に取り組む企業を認定し、優良企業として紹介する制度もあります。
厚生労働省が行う「安全衛生優良企業制度」(*4)で、基準を満たして認定されれば、認定マークを使用することができるため、「働きやすい企業」であることを対外的にアピール可能です。
2015年から始められ、厚生労働省のサイトでは認定された29社が紹介されています。
参考*4:職場のあんぜんサイト:安全衛生優良企業公表制度

対策2 ITを活用した健康管理を行う

クラウドやスマートフォン、AI、IoT(モノのインターネット)など最新のIT技術を活用した、様々な健康管理サービスが実用化されています。
このような技術は、ヘルステック(HealthTech)とよばれ、医療分野の課題解決策として期待されているところです。

富士経済(*5)によれば、ヘルステック市場は今後さらに拡大する見込みで、特に次のサービスが注目されています。

  1. メンタルヘルスサービス
  2. DTC遺伝子検査サービス
  3. 睡眠改善サービス

最新技術を使うことで手間をかけずに健康管理が可能となるため、一括導入する企業も増えています。
参考*5:企業による従業員向けサービスで需要増加が期待される ヘルステック・健康ソリューション関連市場の調査結果 | 富士経済グループ

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対策3 組織ぐるみで「健康経営」に取り組む

健康経営とは、「従業員の健康管理を『将来的な投資』と捉え、戦略的に実践する経営スタイル」をいいます。
従業員の健康を「個人の問題」として放置するのではなく、経営者が健康管理者となり、率先して取り組むものです。

健康経営については、記事「従業員の高齢化対策に「健康経営」!組織で取り組み業績アップへ」で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
※「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です

まとめ

今回は、従業員の高齢化がもたらす健康問題の影響とその対策についてご紹介しました。

健康問題は、放っておけば企業の業績低下まで引き起こしかねない、深刻な課題です。
従業員の健康管理を、コストではなく投資と考えて企業が実践していくことが、これからの経営には必要だと考えます。

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