妊娠・出産は、非常に喜ばしいことです。赤ちゃんが無事に産まれてくることは、奇跡の連続であり、その奇跡を起こすためには周りの助けが不可欠になります。特に妊娠初期は、母体の体調も胎児の状態も不安定なため、特に気を付けたい時期です。
この時期に企業としてバックアップすることは、健康経営を行う上でとても重要になります。妊娠初期の従業員を守るためにできる対応を詳しく見ていきましょう。
妊娠初期の従業員を守るために知っておきたいこと
妊娠初期の従業員を守るために、妊娠初期の状態について詳しくご説明します。
妊娠初期は妊娠2ヶ月〜4ヶ月まで
妊娠は、妊娠初期・中期・後期(末期)の3つに分かれます。
妊娠初期は、妊娠4週〜15週(妊娠2ヶ月〜4ヶ月)までをいいます。それより前の妊娠1~3週は、まだ着床(子宮に受精卵がたどり着き、子宮内に定着した状態)する前や、着床してすぐの時期になります。
妊娠初期は胎児も胎盤も不安定
妊娠初期は、胎児が急速に成長していく時期で、さまざまな器官が形成されます。また、胎児に栄養や酸素を供給し、さまざまな病原菌から胎児を守る役割を持つ、胎盤も作られていく時期です。
そのため妊娠初期は、胎児も胎盤も不安定な状態であり、母体への負担が胎児に大きく影響してしまう恐れがあります。
つわりや眠気などマイナートラブルが起きやすい
ある論文では、妊娠中の就労女性の約70%にマイナートラブル(妊娠に伴っておこる不快症状)が起こることが報告されています。*1 妊娠初期には、どんな症状が出やすいのか、症状の頻度が多い順に見ていきましょう。
強い眠気
女性ホルモンの変化が大きい妊娠初期には、強い眠気が出やすくなります。作業効率の低下やミスが起きやすい状態です。
吐き気/易疲労感
妊娠初期にはつわりが起こり、吐き気が強くなります。
また、疲れやすい、しんどい、休みたいと感じることが増えます。
全身倦怠感(だるさ)
体全体が重く感じる状態です。熱っぽく体がだるいと感じるため、風邪の症状と勘違いすることもあります。
においに対する過敏反応
いつもは気にならない香りにも敏感になり、吐き気を誘発することがあります。たばこの香りや整髪料、体臭に反応することが多いです。
頻尿
子宮が大きくなるため、すぐ近くにある膀胱が押され、トイレに頻繁に行きたくなります。また、便秘として症状が出る場合もあります。
上記のほか、妊娠初期には、お腹が張った感じやイライラ感などのマイナートラブルが起こりやすいです。
妊娠初期の症状と言えば「つわり」を想像しがちですが、実際にはこれらの症状がマイナートラブルとして起こりやすくなっています。
妊娠報告時期とマイナートラブル発症時期には差がある
マイナートラブル開始は妊娠6~7週、終了は妊娠17~18週頃が平均的です。*1 早い人では、妊娠4週頃から始まる場合もあります。
それに対して、職場への妊娠報告は妊娠9週頃が平均的です。つまり、マイナートラブルの開始から妊娠報告までには数週間の差があることがわかります。
この差の理由としては、「職場に繁忙感があり同僚などに迷惑をかけると思った」、「安定期まで待つべきと思った」、「職場に言いにくい雰囲気があった」などが挙げられます。
そして、この差によって、「体調が悪くても無理をして仕事をした」、「妊娠中に避けるべき業務を避けられなかった」などの問題が起こっている現状があるのです。
妊娠初期の従業員をバックアップする5つの取り組み
体調が不安定な妊娠初期には、周りのバックアップが必要です。具体的な方法を5つ見ていきましょう。
①妊娠出産に関する知識の普及
妊娠・出産について、本人はもちろん、周囲が正しい知識を持つことが求められます。つわりやマイナートラブルは気合いではどうにもならないこと、無理をすれば流産や早産に繋がることなど、妊娠・出産に関するセミナーを全社員対象で行うことが望ましいです。
②妊娠した場合の対応に関する資料の配布・掲示
具体的に、妊娠したときの対応について書かれた資料を配布・掲示(イントラネットや社内報など)し、妊娠が判明した場合に早めに伝えることを勧めます。特に、妊娠報告を誰に(各部署の上司なのか人事担当なのかなど)、何週ごろにすべきか明記しておくと、女性就労者も担当者も対応がしやすいです。
③業務内容や勤務時間について相談する窓口を設ける
妊娠中の女性就労者を守るため、企業に対して母性健康管理制度が義務付けられています。
企業は、妊娠中の女性就労者に対して、業務内容や勤務時間、休憩時間等を相談できる環境や機会を整え、希望に沿うよう調整することが必要です。
下記のような業務内容は避けるよう配慮しましょう。
重いものを持つ
- 資料や荷物などの運搬
- 重い家具や棚などの組み立て
全身の運動を伴う作業
- 長時間の徒歩移動(営業・外回りなど)
- 頻回な階段での移動
- 立ちっぱなしの接客
腹部を圧迫するなど不自然な姿勢を強要される作業
- 長時間のデスクワーク
- トイレ掃除や床の雑巾がけ
体への激しい振動
- 振動工具(削岩機やチェーンソーなど)の使用
- 振動の強い車両の操作、運転
激しい気温(室温)の変動
- 空調の効いている室内と、室外を行き来する
- 冷蔵や冷凍倉庫内での勤務
不安定な場所や危険を伴う場所での作業
- 脚立やはしごが必要な業務
- 有害物質を取り扱う業務
また、つわりや頻尿などのマイナートラブルに対して、休憩がこまめに取れる体制を整えたえり、妊婦健診日には休みが取れるように調整しましょう。
④母性健康管理指導事項連絡カードを活用してもらう
母性健康管理指導事項連絡カードは、診断書の代わりになる正式な書類です。このカードを使って、医師からの指導事項を共有することで、女性就労者・企業・医師の3者の意思疎通が円滑に進み、女性就労者に適切な対応を取ることができます。
具体的にどんな配慮が必要で、どんな措置を取るべきかを共有できるので、就労女性にとっても、企業にとっても重要なツールです。
⑤休憩場所の確保
横になれるベッドやスペースを確保します。女性専用の休憩室がない場合は、パーテーションで区切るなど、プライバシーが守れるよう工夫しましょう。休憩室がなく更衣室しかないという場合は、更衣室に長椅子を置くと横になりやすくなります。
立ち仕事が続く接客業の場合は、すぐそばに座れる椅子やスペースを確保し、適宜休憩できるよう配慮することが望ましいです。
まとめ
企業全体で妊娠初期の従業員をバックアップすることで、妊娠報告がスムーズにでき、適切な対応ができるなど、妊娠中の女性就労者が働きやすい環境を作ることができます。
第一子の平均出産年齢が約30歳となっている現在、仕事を任せられる中間層の確保は重要です。妊娠中の女性が快適に長く働ける環境は、妊娠・出産を希望する女性就労者の流出を防ぐことができ、イメージアップにも繋がります。
ぜひ健康経営を推進する企業として、バックアップ体制を整えていきましょう。
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