妊娠は病気ではありませんが、出産するまでのおよそ10カ月間、薬の投与や治療もできない体の不調が続きます。さらに、妊娠合併症を発症すると、胎児の命や母親の命が失われることにもなりかねません。
妊娠中の合併症について知ることは、妊娠中の女性就労者の状態を知り、今後どのようなことが予想され、それに対してなにをすべきかを考えることができます。これらは、女性の働きやすい環境を整える上で、女性従業員を管理するマネージャー、管理職には欠かすことができない重要な知識です。また、健康経営という観点でも女性の働きやすさを整えることもとても重要です。
さっそく、妊娠合併症について見ていきましょう。


流産・切迫流産

どんな病気?

流産とは、妊娠22週未満で胎児が亡くなってしまう状態をいいます。主に染色体異常が原因で起こりますが、過労やストレスによって起こる場合もあります。
切迫流産は、流産の一歩手前の状態ですが、胎児は子宮内にいて無事です。そこから妊娠が継続できる場合もあれば、流産に進行してしまう場合もあります。

症状は?

流産には下記のように分類があり、症状も違ってきます。

稽留流産

出血や腹痛などの症状はなく、子宮内に亡くなった胎児が残っている状態です。自然排出を待つ場合(処置はせず2~4週間待つ)と、子宮内容除去術(子宮の内容物を除去する手術)を行う場合があります。

進行流産

出血や腹痛が始まり、流産が進行している状態です。完全流産と不全流産に分けられます。

  • 完全流産
    子宮の内容物の一部が、子宮内に残っている状態で、出血や腹痛が持続していることが多いです。病院で子宮内容除去術を受けることになります。
  • 不全流産
    子宮の内容物の一部が、子宮内に残っている状態で、出血や腹痛が持続していることが多いです。病院で子宮内容除去術を受けることになります。

切迫流産

流産しかけている状態で、出血や腹痛、お腹がよく張る(突っ張る、違和感がある)、腰の痛みや違和感などの症状が見られます。

予想される仕事への影響

流産の状態によって、仕事への影響も変わってきます。

子宮内容除去術を行う場合

日帰り手術や一泊入院が必要な場合もあるため、手術日や翌日は仕事を休む必要があります。また、手術後2、3日は安静が必要です。

自然排出を待つ場合

突然多量の出血や強い腹痛が起こる可能性があるため、突然の早退や欠勤になる可能性が高いです。

切迫流産の場合

自宅安静の指示が出る場合や入院になる場合もあります。

企業としてできること

手術を受けた場合や自然排出を待っている場合、負担の少ない業務やいつでも休めるよう業務にするなど考慮する必要があります。また、こまめに担当業務の報告を受けておくと、急な欠勤や早退のときに後の対応がしやすくなります。
切迫流産の場合は安静が守れるよう、引継ぎが必要な場合は、電話やメールで行いましょう。
流産は、赤ちゃんの死を意味します。精神的なダメージは回復するのに時間がかかりますので、本人の希望を聞きつつ、業務内容を考慮しましょう。


早産・切迫早産

どんな病気?

早産とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことをいいます。
切迫早産は、早産の一歩手前の状態で、いつ出産になってもおかしくない状態です。

症状は?

早産の場合、陣痛や破水が起こり、出産になります。
切迫早産の場合は、子宮収縮(お腹の張りや痛み)が規則的かつ頻回に起こる場合や、先に破水したり、陣痛と同時に破水する場合もあります。また、無症状で、子宮頸管の長さが短くなっていくケースもあります。

予想される仕事への影響

切迫早産の場合、無理をすると早産に繋がるため、自宅安静や安静入院などが必要になります。産まれる週数が早いほど赤ちゃんへの負担は大きくなり、後遺症の可能性も高くなるため、安静指示は必ず守らなければなりません。
妊婦検診などで切迫徴候が見られた場合、その場で入院が決まることもあり、仕事の引継ぎができないこともあります。

また、早産の場合、赤ちゃんは新生児集中治療室に入ることが多く、限られた時間での面会や搾乳した冷凍母乳を病院まで持って行ったりするなど、なかなか連絡が取りにくくなります。

企業としてできること

早産の場合、そのまま産休・育休に入ることになります。また、切迫早産の場合も、長期入院が予想され、出産まで入院ということもあり得ます。そうなると、早めに派遣社員の依頼や他部署から応援を要請するなどの対応が必要になります。
引継ぎは、メールや電話などで短時間で済むよう、日ごろから部署内で情報の共有を行っておきましょう。


妊娠高血圧症候群

どんな病気?

妊娠中に高血圧を発症した状態で、血圧が140/90mmhg以上になった場合をいいます。ただ血圧が高くなる病気ではなく、重症化すると母子ともに命に関わります。詳しい原因は現在もわかっていませんが、妊娠中に長時間労働や夜勤を続けることで発症のリスクが高くなることがわかっています。

症状は?

高血圧のほか、タンパク尿が出るなどの症状が見られます。
重症化すると、けいれん発作(子癇)や脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、HELLP症候群(肝機能障害に溶血、血小板減少を伴った状態)、常位胎盤早期剥離など、致死的な病気を引き起こします。また胎児の発育が悪くなったり、胎児が亡くなることもあります。

予想される仕事への影響

妊婦健診で、妊娠高血圧症候群の悪化が見られた場合には、そのまま入院になることもあります。急な欠勤になるため、仕事の引継ぎができないこともあります。
また、重症化した場合には、母子ともに危険な状態ですので、緊急帝王切開が行われ、母体の救命処置が並行して行われます。命が助かるか瀬戸際の状態です。

企業としてできること

妊娠中に血圧の上昇が見られた場合は、妊娠高血圧症候群を念頭に入れ、本人と相談しつつ業務内容を考慮するようにしましょう。また、いつ入院になってもいいように、引継ぎ資料を早い段階から作るよう指示し、日ごろから担当業務の報告を受けておくことが大切です。

もし業務中に、意識障害やけいれん、激しい下腹痛、大量の性器出血、目の前がチカチカしたり吐き気を訴えるような症状が見られた場合は、すぐに救急車を要請しましょう。


前置胎盤

どんな病気?

胎盤の位置が低く、子宮の出口(内子宮口)の一部や全部を覆っている状態です。出産が近づいたり、切迫徴候があると、この内子宮口が開いて胎盤が剥がれてしまいます。
胎盤が剥がれると大出血を起こし、胎児への酸素や栄養の供給もストップするため、母子ともに危険な状態になります。
そのため、前置胎盤の場合は帝王切開での出産になります。

症状は?

前置胎盤と診断されたら、お腹の張りや出血に注意が必要です。警告出血と呼ばれる、腹痛を伴わない少量の性器出血が見られることがあり、大出血の前兆の可能性があります。
また、警告出血を伴わない大出血が起こることもありますので、お腹の張りが増える妊娠28週以降には、特に注意が必要です。

予想される仕事への影響

前置胎盤と診断されたら、できるだけ安静にして運動を控える必要があります。
切迫徴候がなければ、産休に入れる妊娠34週まで働くことは可能です。切迫徴候がある場合には、入院が必要になるため、そのまま産休・育休に入ることになります。

企業としてできること

前置胎盤と報告を受けたら、業務内容を負担の少ないものに調整しましょう。また、いつ入院になってもいいように日ごろから準備しておくと安心です。引継ぎ資料は早めに作成してもらい、日々の業務は部署で共有しておきましょう。


常位胎盤早期剝離

どんな病気?

胎盤は通常、胎児を出産後に自然に剥がれて胎外に出てきます。常位胎盤早期剝離では、出産前にも関わらず、胎盤が剥がれてしまい、母子ともに命に関わる状態になります。
常位胎盤早期剝離の30%は、妊娠高血圧症候群に併発するとされています。

症状は?

性器出血と下腹痛、お腹の張り、腰痛などの症状が見られます。剥離した面積が大きいほど、胎児が亡くなる確率が高くなるため、早急な対応が必要です。また、播種性血管内凝固症候群(DIC:本来、血管外で起こるはずの凝固反応が血管内でおこり、全身に血栓ができる状態)を合併しやすいため、発症すれば出血が止まらない状態が続き、母親が亡くなる確率が高くなります。

予想される仕事への影響

ある日突然発症するため、発症の予測ができない病気です。無事に出産できれば、その後は産休・育休に入ることになります。

企業としてできること

無事に命が助かることを祈りましょう。急な入院で、部署内で人手不足が起こることが懸念されますので、早めに派遣社員の依頼や他部署から応援を要請するなどの対応が必要になります。


まとめ

妊娠・出産は命がけです。上記のような妊娠合併症が起これば、胎児も母親も命を失う可能性が出てきます。日ごろからこのような場合を想定して、女性の仕事の見える化を図り、急な欠勤にも対応できるようにしておくことが大切です。

そして、妊娠合併症の発症原因の1つとされているのが、長時間労働や夜勤などの過酷な勤務です。このような勤務を避けられるよう、企業は妊娠中の女性就労者の業務内容を見直すことが必要になります。ぜひ、マネージャー、管理職として妊娠中の女性が働きやすい環境を整え、健康経営を推進しましょう。


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