「健康経営銘柄2016」の選定結果は2017年2月21日に公表され、25業種25社が選定されています。
第2回目となる「健康経営銘柄2016」では、選定される企業に前回とどのような違いがあったのでしょうか。
今回は、「健康経営銘柄2016」選定企業の傾向と、各社の健康経営の取り組みの実例をご紹介します。
「健康経営銘柄2016」選定企業の傾向
まずは、「健康経営銘柄2016」に選定された企業の傾向をご紹介します。
選定企業数が3社増加(「健康経営銘柄」 選定企業数)
第2回目となる「健康経営銘柄2016」では、前回から3社増加した25社が選定されました。

回答企業数が増加(「健康経営度調査」回答企業数)
今回の「平成27年度 健康経営度調査」に回答した企業数は、前回から80社増加した573社となりました。
また、非上場企業が6社回答しています。
当時はまだ「健康優良法人」制度は始まっておらず、「健康経営銘柄」制度では上場企業のみ対象ですので、非上場企業は選定の対象とはなっていません。(「平成27年度 健康経営度調査」に回答した企業の中から、「健康経営銘柄2016」が選定されます)

健康経営銘柄 初選定は4割の11社
「健康経営銘柄2016」では、選定企業の4割である11社が初選定となりました。
選定回数 | 企業数 |
初選定 | 11 社 |
2回目 | 14 社 |
また、選定に使用される「平成27年度 健康経営度調査」では、新規回答企業が261社あり、そのなかの24社(9.2%)が上位20%圏内に入っていました (*1)。
「健康経営銘柄2016」以降も、毎回約3割が初選定の企業となっており、健康経営への取り組みを強める企業が年々増えていると言えます。
参照 *1:平成26年度「健康経営銘柄」
建設業や金属製品など6業種が初選定
25業種が選定された「健康経営銘柄2016」では、建設業、金属製品、機械、その他金融業、保険業、不動産業の6業種が初選定です。
健康経営宣言
ここからは、選定された25社が実際にどのような取組を行ったのか、実例をご紹介していきます。
まずは各社が最初の取り組む「健康経営宣言」です。
「健康経営宣言」の策定
「健康経営銘柄2016」選定時点で「健康経営宣言」を策定していた企業は、次の5社です。
- 健康基本方針【アサヒホールディングス】
- 花王グループ健康宣言【花王】
- コニカミノルタグループ健康宣言【コニカミノルタ】
- 「健康経営の理念」を就業規則に明記【SCSK】
- 健康経営に関する理念方針【トッパンフォームズ】
- シオノギ健康宣言2014 → シオノギ健康宣言2018【塩野義製薬】
こちらの企業では、「健康経営銘柄2016」選定後に健康経営宣言を策定しています。
- 健康経営宣言(2015年10月に策定)【ローソン】
- ワコール健康宣言(2015年11月に策定)【ワコール】
- 健康宣言(2016年2月1日に策定)【東急】
- 伊藤忠健康憲章(2016年6月に策定)【伊藤忠商事】
- 健康宣言(2016年に策定)【リコーリース】
- JAL Wellness宣言(2016年に策定)【日本航空】
- フジ住宅グループ健康宣言(2016年に策定)【フジ住宅】
- 東京海上グループ健康憲章(2019年8月に策定)【東京海上ホールディングス】
健康経営宣言の内容
「健康経営宣言」内容の実例をご覧ください。
アサヒグループホールディングスの健康基本方針
アサヒグループでは健康基本方針のもとで重点施策を定め、従業員の健康増進に取り組んでいます。
SCSK の「健康経営の理念」
SCSKでは、経営理念に掲げる3つの約束の最初に「人を大切にします」と宣言。
そして2015年10月には、就業規則に「健康経営の理念」を規定し、その内容をウェブサイトなどで公開しています。
専任部署の有無
ここでは、健康経営推進の中心となる「専任部署の有無」についてご紹介します。
専任部署をもつ企業は12社
選定企業25社の中で、「専任部署」を持つ企業は12社でした。
たとえば、次のような部署を持った企業があります。
- 人事部働き方支援室【住友林業】
- EHS推進室【塩野義製薬】
- 健康支援室【リンナイ】
- 健康管理室【伊藤忠商事】
健康経営と安全の推進を行う組織・体制を公表【トッパン・フォームズ】
トッパン・フォームズでは専任部署は置かず、組織全体で健康経営と安全衛生を推進しています。
産業医・保健師等の医療専門職に加え、健康保険組合と連携して実施体制を構築します。
【伊藤忠商事】
合計20数名の専門医やエックス線技師、薬剤師も所属する「健康管理室」が専任部署となる伊藤忠商事。
健康経営に関する施策については、月1回実施する健康経営三者定例会での議論を行うことで、労働安全整理についての情報共有も行います。
取り組みの成果と報告
健康経営の成果については、多くの企業がウェブサイトで公表していますが、健康白書を発行している企業やIR資料にも記載しているケースもあります。
①ウェブサイトで実績値などを公表
多くの企業がウェブサイトで成果を報告していますが、より詳細なデータを公表している企業があります。
「保健指導等の実施と改善状況」を公表【フジ住宅】
フジ住宅では、「喫煙率」や「運動習慣割合」などの目標値・実績値のほか、「保健指導等の実施と改善状況」もウェブサイト上で公表しています。他社ではあまり見られない、貴重なデータです。
「JAL Wellness」で指標達成度のほか「データヘルス計画」実績も公表【日本航空】
「JAL Wellness」として健康経営を進める日本航空では、ウェブサイトで多くの情報を公開しています。
- JAL Wellness MyBook:日本航空の健康経営に関する様々な情報が記載された小冊子
- データヘルス計画:「データヘルス計画」とは、従業員の医療情報や健診結果などのデータ分析に基づいた保健事業を行う取り組み。その詳細な計画書と実績が記載
- 2012年度度以降の JAL Wellness 指標 達成度:毎年度の目標値(「喫煙率」や「婦人科健診受診率」など)とその達成度
②健康白書で取組内容や実績値を公表
健康関連に特化した健康白書を作成して、取組内容や実績値を公表している企業もあります。
ただし、「健康経営銘柄2016」選定の活動当時(2015年)には、まだ作成されていませんでした。
また大和証券では2015年から健康白書を作成していますが、ウェブサイト等では公表していません。
- 大和証券健康白書(2015年から)
③IR資料などで実績値を公表
ウェブサイトの他に、IR資料などで実績値を公表している企業もあります。
『サステナビリティレポート2015』では取組内容まで、2018からは実績も公表【花王】
『環境社会報告書2016』から、取組内容を公表【神戸製鋼】
『サステナビリティレポート 2016』から、取組内容と実績を公表【東京海上ホールディングス】
選定企業が行った取組内容 TOP3
ここでは、選定25社が健康経営の取組内容として公表している中で、多かった取組内容TOP3をご紹介します。
【3位】運動機会の増進に向けた取組(18社で実施)
選定企業25社中、18社が実施を公表しているのが「運動機会の増進に向けた取組」です。
例えば次のような取り組みが行われています。
- 全社員の4割となる2,000人が参加したウォーキングイベント、スニーカー通勤の推奨【塩野義製薬】
- 従業員組合が主催するスポーツ大会、ボーリング大会、ウォーキングフェスティバルの会社側の費用負担【リンナイ】
- 肩こり腰痛の改善や運動の習慣化を目的に、就業前に実施する「オリジナル体操」をリニューアル【ワコールホールディングス】
【2位】保健指導の実施及び特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み(19社で実施)
19社が実施と公表しているのが「保健指導の実施及び特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み」です。
リンナイでは、生活習慣病の予防に向けて、メタボ対策を重点として特定保健指導の実施率向上に力を入れています。
特定保健指導の対象は法令上40歳からとなっていますが、35歳からを対象に。
40歳未満のメタボ該当者を減らし、特定保健指導の新規加入者を減らすことが目的です。
他にも指導方法を個別・グループと形式を変えながら実施することなど、社員が関心を持つよう工夫したところ、2008年には30.6%だった特定保健指導実施率が、2014年度には56.7%にまで向上。
さらにメタボと予備軍の該当率は、2008年度が27.2%だったのが2015年度には23.6%に減少しました。
【1位】従業員への教育機会の設定(20社で実施)
最も多い20社が実施と公表したのが、「従業員への教育機会の設定」です。
例えば、次のような教育を実施しています。
- マインドフルネスを学べるゼミ、睡眠や健康について学ぶゼミを開催【ネクスト 現LIFULL】
- 心と身体の健康づくりセミナー【トッパンフォームズ】
- 適切な食事と運動の習慣化に関するセミナー【リコーリース】
- 生活習慣病予防のためのセミナー【フジ住宅】
選定企業が行ったユニークな取組内容
最後に、「健康経営銘柄2016」選定企業が行った、ユニークな取組をご紹介します。
成果に応じたポイントを付与する「健康マイレージ」【ワコールホールディングス】
ワコールホールディングスが実施するのは、楽しみながら健康増進への取り組みを継続するため、成果に応じたポイントを付与する「健康マイレージ」です。
各自が設定した生活習慣改善チャレンジ目標を達成することでポイントが付与され、獲得したポイントを商品に交換できる仕組みです。
「健康マイレージ」を活用したウォーキングイベントも開催されています。
健康ウェラブル端末を配布してデータ管理【伊藤忠商事】
全社員がパソコンやスマートフォン上で健康診断結果や歩数、体重・体脂肪率、摂取カロリーなどの生活習慣データを一元管理できる「健康マイページ」を導入したのは、伊藤忠商事です。
さらに若手社員の生活習慣病予備軍に対しては健康ウェアラブル端末を配布。
運動や睡眠などのデータを収集、食事データも管理することで、ヘルスコーチや管理栄養士によるオンライン上の食事・運動指導が毎日受けられる個別指導プログラムも合わせて導入。
これまで240名以上が利用して、成果を出しています。
このように施策を組み合わせて、目標を達成することも一つの方法ですね。
健康経営指標「生活習慣スコア」の設定【デンソー】
デンソーでは、オリジナルの健康経営指標である「生活習慣スコア」を設定しています。
「生活習慣スコア」は、健診結果と問診データをもとに個人の生活習慣レベルを点数化した、独自の健康指標として、全社平均値を会社目標のひとつにも設定。
属性・生活習慣による特性・経年変化を示すことで、スコア改善に向けた取り組みを推進します。
また専用アプリ「デンソー健康ステーション」を自社開発するなど、健診結果や歩数、栄養摂取の個人データの見える化も進めています。
まとめ
今回は「健康経営銘柄2016」選定企業の傾向や、取組事項についてご紹介しました。
端末を導入する大掛かりなものから就業前に行う体操まで、様々な取組内容がありましたね。
選定企業各社の取組内容を参考に、「できること」と「従業員が必要としていること」を見極め、健康経営の第一歩を進めてみませんか。
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