企業経営において、税金の滞納は深刻な問題を引き起こす要因の一つです。
特に日本政策金融公庫からの融資を検討している際、税金の未納は大きなハードルとなり得ます。
本記事では、税金を滞納している場合に日本政策金融公庫からの資金調達が可能かどうか、また他の資金繰りの手段について詳しく解説します。
税金を滞納していると日本政策金融公庫の融資は基本的に受けられない
日本政策金融公庫は、新規起業家や中小企業に対して融資を行う公的な金融機関です。
信用力がまだ十分でない企業でも資金調達のチャンスがありますが、税金の未納がある場合、その可能性は大きく低下します。
税金未納のケース
日本政策金融公庫の融資を申請する際には、所得税や法人税の納税証明書などの提出が求められ、税金を適切に納めていることが前提となります。
税金の未納は財務管理に問題があると判断され、返済能力に疑問を持たれる要因となります。
公的な性格を持つ日本政策金融公庫は、税金を滞納している企業に対して厳しい姿勢を取る傾向があります。
そのため、税金を滞納している場合は、まずその解消に努めることが最優先となります。
納税が難しい場合でも、税務署や自治体と協議し、分割納付や猶予制度を活用して滞納額の減少を図ることが重要です。
信用情報に問題がある場合
信用情報とは、これまでの借入や返済履歴、支払い遅延などの情報が記録されたものです。
金融機関はこの情報を参考に融資審査を行います。
税金の未納だけでなく、信用情報にネガティブな履歴がある場合も、日本政策金融公庫からの融資は困難になります。
支払い遅延や未払いの記録があると、財務管理能力に問題があると見なされ、融資の承認が得られにくくなります。
融資を検討する際には、自身の信用情報を確認し、問題点があれば事前に解消しておくことが必要です。
提出書類で滞納状況を確認される
日本政策金融公庫は、企業から提出された書類を基に財務状況を審査します。
特に、税務申告書や納税証明書から税金の滞納状況を確認します。
書類に不備がある、または滞納が判明した場合、審査に通過するのは非常に難しくなります。
そのため、申請前に必要な書類を正確かつ最新の状態で準備し、提出することが重要です。
もし書類に問題がある場合は、事前に日本政策金融公庫に相談し、対応策を講じることが望ましいです。
社会保険料の未納がある場合の可能性
税金の滞納とは異なり、社会保険料の未納がある場合でも、日本政策金融公庫から融資を受けられる可能性があります。
しかし、社会保険料の未納も企業の信用低下につながるため、早期に支払いを完了することが推奨されます。
日本政策金融公庫は審査時に社会保険料の未納状況を確認し、状況に応じて融資の可否を判断します。
未納が一時的であり、明確な支払計画がある場合は、融資が承認されるケースもあります。
信用情報の確認方法について
自身の信用情報に不安がある場合は、各信用情報機関に開示請求を行うことで確認が可能です。
日本には、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)といった機関があります。
これらの機関に開示請求を行い、自身の信用状況を把握しましょう。
信用情報には、クレジットカードの利用履歴やローンの返済状況などが含まれています。
問題がある場合は、その原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。
例えば、未払いがある場合は速やかに支払いを行い、信用情報の改善に努めます。
その後、信用情報機関に情報の更新や訂正を依頼することも可能です。
税金滞納時に検討できる資金調達方法:補助金の活用
税金を滞納していると日本政策金融公庫からの融資は難しいですが、他の資金調達手段を検討することで、事業の継続や資金繰りの改善が期待できます。
その一つが、経済産業省などが提供する各種補助金の活用です。
補助金は基本的に返済の必要がないため、資金調達の有力な手段となります。
補助金は常時申請を受け付けているわけではなく、年間のスケジュールに沿って公募や審査が行われます。
最新の情報は中小企業庁などの公式サイトで確認し、タイミングを逃さないようにしましょう。
以下に代表的な補助金を紹介しますが、年度によって要件や条件が変更されることがあるため、常に最新の情報をチェックすることが重要です。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
この補助金は、中小企業や小規模事業者が新製品開発やサービス向上のための設備投資を行う際に活用できます。
製造業だけでなく、サービス業や商業など幅広い業種が対象となっています。
最大で1億円の補助が受けられるため、大規模な投資を計画している企業にとって非常に有益です。
申請には詳細な事業計画書の提出が必要で、審査も厳格に行われます。
小規模事業者持続化補助金(一般型・コロナ特別対応型)
この補助金は、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取り組みに対して支給されます。
最大で200万円の補助が受けられ、比較的少額の投資や経費にも対応しています。
新たな市場への進出やウェブサイトの構築、広告宣伝費など幅広い用途で利用可能です。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ポストコロナ時代に対応した新たなビジネスモデルへの転換を支援するものです。
業態転換や新分野への進出を計画している企業に対し、最大6,000万円の補助が提供されます。
申請には具体的な事業計画とその実現可能性が求められます。
早期経営改善計画策定支援事業
経営状況が悪化している中小企業が、専門家の支援を受けて経営改善計画を策定する際に利用できる補助金です。
最大で15万円の補助が受けられ、経営コンサルタントや税理士のアドバイスを受けながら計画を立てることができます。
この計画を基に他の資金調達手段を検討することも可能です。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業の生産性向上を目的として、ITツールの導入を支援する補助金です。
通常枠で最大450万円の補助が受けられます。
業務効率化や自動化を図るためのソフトウェアやクラウドサービスの導入に活用できます。
税金滞納中でも、業務改善を通じて資金繰りの改善が期待できるでしょう。
税金滞納時に検討できる資金調達方法:ビジネスローンの利用
税金を滞納している企業でも、ビジネスローンを活用して資金調達が可能な場合があります。
ビジネスローンは、主にノンバンク系の金融機関が提供しており、迅速な資金繰り改善に役立ちます。
ビジネスローンで資金調達が可能な場合
ビジネスローンは、日本政策金融公庫の融資と比較して審査基準が柔軟で、税金の滞納があっても借入できる可能性があります。
特にノンバンク系のビジネスローンは、審査が迅速で資金調達までの時間が短いのが特徴です。
ただし、金利が高めに設定されていることが多いため、返済計画を慎重に立てる必要があります。
納税資金としての利用も可能
ビジネスローンを利用して、滞納している税金の支払いに充てることも可能です。
一時的な資金不足で納税が困難な場合、ビジネスローンで資金を調達し、税務署と分割納付の交渉を行うことで、信用回復につなげることができます。
税金の滞納を放置すると、さらなる信用低下や資産の差し押さえといったリスクがあります。
ビジネスローンを活用して早期に滞納を解消し、将来的な資金調達の道を開くことが重要です。
ビジネスローン利用のメリット
- 迅速な資金調達が可能:審査がスピーディーで、急な資金需要に対応できます。
- 無担保での借入が可能:不動産などの担保がなくても利用できる場合が多いです。
- 資金使途が自由:事業資金として幅広い用途で利用できます。
しかし、高金利であることが多いため、資金繰りや返済計画をしっかりと立てることが必要です。
税金滞納時に検討できる資金調達方法:ファクタリングの活用
ファクタリングは、売掛金を現金化することで迅速に資金を調達できる手段です。
税金を滞納している企業でも利用しやすいのが特徴です。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングは、企業が保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、早期に資金を得る方法です。
将来の入金を前倒しで受け取ることで、キャッシュフローの改善につながります。
ファクタリングには主に以下の2種類があります。
2社間ファクタリング
- 利用者とファクタリング会社の間で取引を行う。
- 売掛先に通知せずに資金調達が可能。
- 手数料が高めになる傾向がある。
3社間ファクタリング
- 利用者、ファクタリング会社、売掛先の3者間で取引を行う。
- 売掛先の承諾が必要。
- 手数料が比較的低い。
ファクタリングのメリット
税金滞納中でも利用可能
ファクタリングは売掛金の信用力を重視するため、利用者の税金滞納は大きな問題とされません。
迅速な資金調達が可能
最短で即日入金も可能なため、急な資金需要に対応できます。
未回収リスクを回避できる
ノンリコース(償還請求権なし)の契約が一般的で、売掛先が倒産しても利用者がリスクを負わないのが特徴です。
日本政策金融公庫への返済が困難な場合の対処法
日本政策金融公庫からの融資を受けた後、返済が難しくなった場合は、早めに同公庫に相談することが重要です。
適切な対応を行うことで、延滞による信用低下を最小限に抑えることができます。
遅延損害金について
返済が遅れると遅延損害金が発生しますが、日本政策金融公庫では状況に応じて返済計画の見直しや猶予措置を提供してくれる場合があります。
早期に相談し、現状を説明することで、適切なサポートを受けることが可能です。
まとめ
税金を滞納している場合、日本政策金融公庫からの融資は基本的に難しくなります。
しかし、補助金の活用やビジネスローン、ファクタリングなど他の資金調達手段を検討することで、資金繰りの改善や事業の継続が可能です。
各手段にはメリットとデメリットがあるため、自社の状況や目的に合った方法を選択することが重要です。
また、滞納を早期に解消し、信用力を回復させることで、将来的な資金調達を円滑に進めることができます。計画的な資金管理と迅速な対応が求められます。