キャッシュフロー計算書を間接法で作成する際、支払利息を一度足してから引くという手順が存在します。この手続きに対して「なぜわざわざ足してから引くのだろう?」と疑問を感じた方も多いのではないでしょうか。
今回は、この手順が必要とされる理由について説明していきます。企業の資金の流れを正確に把握するためにも、この手順の意味を理解していきましょう。
間接法のキャッシュフロー計算書で支払利息を足して引く理由とは?
キャッシュフロー計算書を間接法で作成する場合、営業活動によるキャッシュフローのセクションで「支払利息を加算し、次に減算する」という操作を行います。
- 税引前当期利益:30
- 減価償却費:180
- 営業外収益:△50
- 支払利息:100
- 売上債権の増加額:△40
- 仕入債務の増加額:20
- 棚卸資産の増加額:10
小計:250
- 営業外収入:50
- 利息の支払額:△100
- 法人所得税の支払額:△10
営業活動によるキャッシュフロー:190
キャッシュフロー計算書の役割は現金の動きを把握すること
キャッシュフロー計算書とは、企業の現金の流れを一目で把握するための財務書類です。損益計算書や貸借対照表からは見えない現金の流出入を確認することができ、最終的に手元に残る現金の額を確認できます。
間接法でのキャッシュフロー計算書作成方法
キャッシュフロー計算書には、直接法と間接法の2つの作成方法がありますが、「支払利息を足して引く」操作は間接法で行われます。間接法は、損益計算書や貸借対照表のデータを基に、営業活動によるキャッシュフローを調整して記載する方法です。
具体的には、税引前当期利益を基準として、現金の動きを調整していきます。損益計算書や貸借対照表を利用するため、比較的手軽にキャッシュフロー計算書を作成できることが特徴です。間接法でのキャッシュフロー計算書の作成手順は以下の通りです。
- 税引前当期純利益を記載する
- 非現金項目の増減を調整する
- 営業外損益・特別損益の増減を調整する
- 営業活動に関連する資金の動きを調整する
直接法との違い
間接法では、税引前当期純利益を基に現金の動きを加減算しますが、直接法では各取引ごとに現金の動きを記載します。手軽に作成したい場合は間接法が適しており、詳細な現金の流れを把握したい場合は直接法を選ぶと良いでしょう。
小計前の「支払利息」と小計後の「利息の支払額」の違い
間接法のキャッシュフロー計算書では、小計前に支払利息を一度加算し、小計後に利息の支払額として減算します。
この操作を理解するためには、キャッシュフロー計算書における利息と配当の取り扱い、および小計前後の「支払利息」と「利息の支払額」の違いを把握する必要があります。
利息および配当金の扱いについて
キャッシュフロー計算書では、利息と配当金の扱いが特殊であり、場合によっては加算と減算の両方が必要になります。
方法1:損益計算書に計上された利息の処理
損益計算書に記載される受取利息や受取配当金、支払利息は「営業活動によるキャッシュフロー」に計上し、損益計算書に含まれない支払配当金は「財務活動によるキャッシュフロー」に記載する方法です。
この方法では、支払利息を一度足して引く手順が実施されることが一般的です。
方法2:投資活動および財務活動における処理
もう一つの方法として、受取利息と受取配当金を「投資活動によるキャッシュフロー」に、支払利息と支払配当金を「財務活動によるキャッシュフロー」に記載するという手法もあります。こちらは、活動区分ごとに現金の動きを分類します。
小計前の「支払利息」についての理解
支払利息を足して引く操作を理解するために、まずは小計前の「支払利息」がどういう意味を持つのかを確認しましょう。
小計前の純粋な営業キャッシュフロー
間接法のキャッシュフロー計算書では、損益計算書のデータを直接転記します。そのため、小計前の「支払利息」は損益計算書の数字そのものとなります。
損益計算書は特定の期間における収益と費用をまとめた書類であり、将来的な支出も考慮されて作成されます。このため、小計前の「支払利息」には実際に支払われた金額と、まだ支払っていない未払金の両方が含まれることになります。
損益計算書を基にするため符号が逆
キャッシュフロー計算書では、損益計算書を逆算する形で記載します。このため、収益はマイナス、費用はプラスとして表示され、支払利息はプラスとなるのです。
小計後の「利息の支払額」とは何か?
次に、小計後の「利息の支払額」について理解を深めましょう。これは、キャッシュフロー計算書を作成する際に非常に重要な項目です。
小計後には営業活動以外のキャッシュフローも含める
キャッシュフロー計算書の小計後には、営業活動以外の取引による現金の動きも含められます。たとえば、利息や配当金、法人税の支払いが該当します。
実際に支払った利息を反映して減算
小計後に記載される「利息の支払額」は、実際に支払った利息を示しています。そのため、この項目の符号はマイナス(△)となります。たとえば、支払利息として100万円が計上されている場合、そのうち70万円が実際に支払われたとすると、△70として記載されるのです。
小計前の「支払利息」には、既に支払った利息と未払いの利息の両方が含まれます。このため、小計後に実際に支払った金額を引くことで、より正確な現金の流れが可視化されるのです。この理由から、間接法でキャッシュフロー計算書を作成する際に「支払利息を足して引く」という手順が必要になります。
支払利息の金額が異なる場合もある
営業活動によるキャッシュフローの項目には以下のような例があります。
- 支払利息:100
- 小計:ー
- 利息の支払額:△70
このように、支払利息として100が記載されている場合でも、実際に支払った額が異なることがあります。たとえば、支払が次期に繰り越されると、当期の「支払利息」と「利息の支払額」の金額が異なる場合があります。
受取利息や受取配当金も同様の考え方
受取利息や受取配当金についても、基本的には支払利息と同様の扱いをします。ただし、キャッシュフロー計算書を作成する際には、損益計算書を基に逆算するため、収益の項目はマイナス符号となり、費用の項目はプラス符号で表示されます。
受取利息と受取配当金は収益項目のため、小計前に一度引き、実際に受け取った金額を小計後に足す形で記載されます。
まとめ
キャッシュフロー計算書で支払利息を足してから引く理由は、正確な現金の動きを把握するためです。間接法でキャッシュフロー計算書を作成する際には、損益計算書のデータを営業活動によるキャッシュフローに転記しますが、損益計算書には支払利息と未払利息の両方が含まれているため、どれだけの利息が実際に支払われたのかを把握することができません。
そのため、キャッシュフロー計算書の小計後に実際に支払われた利息を減算することで、正確な現金の流れを確認できるようにしています。この作業は複雑ではありますが、企業の資金繰りや現金の動きを正確に管理するためには欠かせないプロセスです。
この記事を通じて、キャッシュフロー計算書の作成方法や意義についての理解が深まり、正確な財務管理ができることを願っています。